病によりて道心起こる2003年10月01日
作家の五木寛之氏は朝日新聞のコラム欄で自分の体質のことを語って、
子供の頃から虚弱体質で、よく腺病質といういいかたをされ、すぐ扁桃腺がはれた。
大人になると、呼吸器系に変調を感じ、
中年以降は、片頭痛で七転八倒した。
流行作家時代は心臓がおかしかった。
中年過ぎると、下血が続いた。ちょうど「週刊朝日」に雑文の連載をしていた頃で、そのことを書いたら、新幹線の中であった中年のご婦人がハンカチで目を押さえながら、「わたくし、高校生の頃からの長い読者でございましたのに―」と、おっしゃった、過去形で言われると気になるものである。
体が弱いと自分で思っているだけに、色々工夫したり、注意したりする。西洋医学を尊敬し、東洋医学も大事に考え、最近はアラブ、イスラエル圏の医学の古典を読み始めた。此れが非常に面白い。体が弱いと言うのも、悪いことだけじゃないな、とあらためて思う。
と、概略このようなことでした。
昔から「一病長命」と言うように体の弱い人は注意をするので、却って健康を保つということではないでしょうか。
思うに、日蓮上人も決して健康自慢と言うような方ではなかったような気が私はします。病気に対しても深いご理解があったように思われるからです。だけど、絵姿など拝すると頑丈そうなお体で、だから幾多の法難にも耐えることがお出来あそばしたと言えるかもしれませんが、そうではなく常に細心の健康留意と法華経の行者としての信念が日蓮上人を支えていたような気がするのです。それと言うのも信者への思いやり、殊に病者へのいたわりのお言葉など通り一遍ではないように思えるからです。
その日蓮上人の傍には常に健康管理者の四条金吾がいました。日蓮上人曰く
「浄名経・涅槃経には病ある人仏になるべきよし説かれて候。病によりて道心はおこり候か」(妙心尼御前御返事)
平成15年10月1日