小を以って大を打つ2003年08月05日
暑中お見舞い申しあげます。
先日の朝日新聞紙上、聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんと北里大学教授養老孟司さんとの対談の冒頭、日野原さんは
こんな例から話しましょうか、ときりだしてこんなことをいっています。
体重が落ちて、胃腸の調子が悪が良くないという高齢の患者さんがいた。担当のお医者さんが問診したり、のどを診たりしたけど、見当がつかない。がんかもしれないと詳しく検査したけど、わからない。僕は患者さんの年齢を考えて、其の医者に「歯はどうだった」と聞いたの。そうしたら「覚えていません」。口の中を見ているのに。のどしか診ていないので、きがつかない。実は其の患者さんは歯が悪くてうまく食べられなくて、潰瘍になっていたのね。このように、自分がわかっていること、知ろうとしていることしか、わからない人が多いんじゃないか。
と、自分にわかる病変をさがしあてて手柄とするが、自分にわからないものは、たとえそれが大事な病変であっても、見落としてしまうと言うことを戒めておられるのではないでしょうか。
人間という総合的な個体はその全体像において診断をしないと判断を誤ることにもなりかねません。
昔から、武芸百般で言われてきたことも、自分の得意技を頼って、小さな武勇を誇り、却って大きなわざわいを招くことのないように、小さな病変が大きな命取りになることをいましめたものです。
養老さんは「日本という共同体をどう作ろうか、大きなビジョンを示す時」といっておられるが、わずかな病変、それが災いにならなければ幸です。
日蓮上人観心本尊鈔に曰く
小を以って大を打ち、権を以って実を破し、東西共にこれを失し、天地顛倒せり。
平成15年8月5日 「小を以って大を打つ」