法雨抄

寿命は天が決める物2003年06月01日

 大日本飛行協会学生航空隊に所属し、飛行訓練グループ第4期生として、昭和19年から終戦の日まで水上機訓練に従事していた、現中央大学名誉教授小堀憲助氏の「青春のつばさ」に寄せた『大空に夢をかけたわが青春の一齣』という一文の中に、手相見の老女易者とのやり取りが載っている。
 それは、民間特別攻撃隊に決まってから、行きずりに見てもらった手相見から長命であると予言されて、「自分は近い将来にこの世を去らねばならないことになっている」というと、
 「寿命は天が決めるものであって、人が決めるものではない。寿命の長い人もある。また短い人もある。しかし、それは天から与えられたものだと悟れば、短ければ短いだけ、そして長ければ長いだけ、自分をこの世に送り出してくださった天の声に心を傾けるような人生を送る必要がある」
 「私の見るところでは、あなたは必ず72歳までこの世にいることを命じておられる」
 「あなたが何歳まで生きれるか知りたければあなたが、どこまで天命に添って生きて行くかにかかっている。世の中にご恩返しをするような行き方をしなさい。」それを見て、神様が、あなたを必要とされる限り、あなたはこの世にいることを許される」と。
 確かに寿命は天が決めるものでしょう。私は何歳まで生きると言ったところで人間がどうこうできるものではないでしょう。寿命と言うのは、いかに私たちが天地の理法に沿った良質な生き方をするかにかかっているのではないでしょうか。良質と言うことは、自分がこの世に生きていることが周囲を生かし、人々に生きる喜びを与えるような生き方を、つまり世の中にご恩返しをするような行き方を心がけることではないでしょうか。
 日蓮上人松野殿女房御返事に曰く
 濁れる水には月住まず。枯れたる木には鳥なし。心無き女人の身には仏住み給わず。


平成15年6月1日 「寿命は天が決める物」

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