法雨抄

出会い2007年07月01日

 ふだんは天の川を隔てて逢えない彦星と織姫が「一年に一度の逢瀬をたのしむ」のが七夕です。つまり年に一度、七月七日に彦星が天の川を渡って織姫に逢いに行き、その夜は二人で楽しく過ごすのです。
 天の川には「鵲(かささぎ)が渡せる橋」といって、鵲たちが一列になった橋がかかるといわれます。
 七夕は本来、旧暦の七月、つまり初秋の行事です。旧暦の七日というのは、七日のお月さんが出ているということです。つまり半月、此れを「月のみふね」といいまして、それに乗って天の川を渡るともいうのです。
 天の川原には秋の七草が咲いている。そこに「宿す露」、そして「すだく虫」。まさに日本の秋を象徴するような風景の中、彦星は織姫に逢いに行くのです。
 夏が終わり、陽射しが柔らかくなり、夜が長くなってくる...、七夕はそんな頃の夜の祭りなのです。(なごみ七月号)
 古くは七夕の行事を「乞巧奠(きっこうてん)」といって、織姫にあやかって機(はた)織りの上達を祈る祭りであり、芸ごとの上達を願う祭りでもあったそうです。
 また、村々では初なりの野菜などを供えて、順次の雨を願い、或は身についた穢れを流すために水を浴びたりもしたようで、農耕儀礼の主要な一節でもあったようです。
 年々歳々、農耕技術の向上を願い、豊かな収穫を祈ったのでしょう。
 織姫もまた一年がかりで立派な衣を織って、精神的にも成長して、年に一度の逢瀬を楽しむのではないでしょうか。
 私たち人間の出会いというのも、その出会いによってお互いが啓発され、心が豊かになってこそ、楽しく、実りのあるものになっていくのではないでしょうか。
 日蓮聖人最蓮房御返事に曰く
 我等は流人なれども身心共にうれしく候也。大事の法門をば昼夜に沙汰し、成仏の理をば時々刻々にあじあう。

平成19年7月1日 「出会い」

法雨抄一覧へ戻る