法雨抄

美しく老いる2006年08月01日

暑中お見舞い申しあげます。
 異常な暑さですが、
  ご自愛ください。

 水野南北(江戸時代の相学者)は「食は命なり、運命なり」と断じた。「人を鑑(定)しみるに、一箇年先に大難ある事を見極むるといえども、其の時より食を厳重に慎む者は、かならず是を免がれ、反って其の年に当たり思わず吉事来る者多し」とある。
 ヘラクレイトス(ギリシャの哲学者)に倣えば、飲食を厳重に慎んで実行するというその性格が、その性格によってその人の運命をつくっていくということになろうか。
 アンチエイジング(抗加齢)という言葉が流行っているのは、人々の間に年をとることイコール肉体の衰え、と捉える傾向あるからだろう。肉体が老いるのは自然であって、是に抵抗できるものではない。しかるに多くの人は肉体の変化をもって人生の変化と捉える根強い癖がある。年をとるとともに、われわれは人生経験を積んでいく、経験の厚みが増していくはずである。
 これは「人間医学」巻頭言にあった一節ですが、この頃は年をとらない工夫もさることながら、美しく年をとる、ということもよく言われているように思います。年をとることは避け得られないものであるならば、美しく年をとる工夫こそ大事なことではないでしょうか。
 江戸幕府の制度のなかに大老とか中老とか言う役職が有りましたが、其の「老」は経験豊かな人生の達者を意味するものではなかったでしょうか。
 年と共に厚みを増した人生経験を世のため人の為に役立てて、生きがいのある人生を心がけることこそが真の抗加齢というべきではないでしょうか。崇峻天皇御書に
 教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ、と。


平成18年8月1日 「美しく老いる」

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