法雨抄

皆の輪の中で2002年02月01日

 俳優の北大路欣也が「父子鷹」で初デビューしたのは12才だったそうですが、その時のことを東京ロータリークラブでこんなふうに話をしています。
 「一番いい場面で、母親に泣いて訴える場面があるのですが、どうしても泣けないのです。何回やり直しても出来ない。母親役の長谷川裕見子さんが、『欣也ちゃん、何もかも忘れなさい。形はできてるのよ。今度はね、私の目だけを見てやるのよ。私の目を見なさいね。』と言ってくれました。「はい」と答えた私は、初めて本番で相手の方を意識したのです。それまでは、全部、自分でやろう、自分の力でやろうと思っていたのだと思います。本番が始まりまして、お母さんの目から涙がぽろっとこぼれたのを見た瞬間、私は、何がなんだかわからないけれど、溢れるように涙が出たのです。
 本番が終わって考えました。初めて、相手の人を見て、相手の波動を受けて、私が役の気持ちになれたんだ。それは演技力とか言うことではなくて、自分もやっと、皆作り上げる輪の中に入れたんだということだと感じました。この仕事はスタッフの皆さんの大きな支えがないと絶対に出来ないものだ言うことを実感しました。と。
 世の中のこと全て、周囲の人々の支えなくしてできるものはないでしょう。
 ましてや、志を同じくするもの同志は、常に他の同志の意見に耳を傾け、自分に足らない所は他の同志に学んで行く謙虚さをもって、切磋琢磨するならば、どんな大きな仕事も出来ると言うものではないでしょうか。勿論自分の意見はしっかりと持っていなければなりませんが、それは他に押し付けたり、自慢したりすべきものではないでしょう。皆の輪の中でそれを磨いて行く事が肝心なのではないでしょうか。
 日蓮上人は異体同心事に曰く
 「異体同心なれば万事を成じ、同体異心なれば諸事かのう事なし」と。
 異体同心とは切磋琢磨することです。

平成14年2月1日 「皆の輪の中で」

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