法雨抄

小欲知足2001年05月01日

 読売新聞社など全国の58新聞社と財団法人地域活性化センター主催のシンポジウム「21世紀のふるさとづくり2001-わがまちづくりの推進」で、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏は
 先進諸国の人々がさらに高度で豊かな生活を望み、途上国の人たちも豊さを求めたら、資源の制約という問題に遭遇する。地球がその負荷に耐えられるだろうか。今、人類は「足るを知る」と言うことを思い出すべき時に来ている。
 これ以上のぜいたくや欲望を追求するのでなく、不平不満に心をすり減らす生活から、一刻も早く逃れるべきときだとおもう。
 動植物などあらゆる自然界のものは共生し、自然の循環に従って生きている。そういうことを我々の先祖は古くから知っていた。縄文時代の人々は自然環境を乱すことが人類の破滅につながることをよく知っていた。しかし、人類は農耕牧畜文明を手に入れ、自然を支配する試みが始まった。その結果、文明は高度な発展を遂げたが、自然循環のメカニズムを崩してしまった一面もある。云々(読売新聞)
と、今人類は地球と共存し、生存する道を考えるべき時に来ていることを警告し、その解決策として「小欲知足」を提案しています。それは古くて新しい人類の叡智です。
 人類は欲望を追及することによって文明を発展させてきました。経済の問題にしても自由競争があって、高度な経済発展が成し遂げられたのです。然し、だからと言って何でもかんでもやっていいと言うことではないでしょう。欲望の無制限追求の果ては地獄です。やっていいことと悪いこととがあります。皆で幸せになる為にどうあるべきかを忘れてはなりません。私たちの自由には同時に社会的責任の自覚がなければならないのです。

 日蓮上人 上野殿御返事に曰く
 浄土というも地獄と言うも外には候わずただ我等が胸の間にあり。

平成13年5月1日「小欲知足」

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