法雨抄

互いに高め合う競争1998年09月01日

経済界は、大競争の時代だからこれに対応する学術、学校システムに変えなくては、と盛んに言っている。しかし、国連の子どもの権利委員会も日本の教育は過度に競争的だと批判している。競争よりもむしろ生活の質を軸にした共生の思想を皆で考えていく時代です。
相手を蹴落とす競争ではなく、互いに高め合う競争こそが必要です。其の際に大事なのは「共通の善」と言う考え。公共的なるものへの責任意識と言い換えてもいい。
これは朝日新聞紙上で、日本教育学会会長堀池輝久さんと経済同友会副代表幹事小林陽太郎との対論の中で、堀池さんの発言の一部です。
先日聞いた話ですが、ある宗教団体の定例会からの帰りと思われる人たちが、あるバス停でバスを待つ間、何やら声高に議論をしていたが、バスが来ると我先にと仲間を蹴飛ばすようにバスに殺到し乗り込んで行った。たった今その定例会で良いお話を聞いて来たはずなのに、その姿は、誠に情けないものだったというのです。
相手を蹴落とす競争からは何も生まれてきません。商売にしたって唯儲けのためだけではなく、世の為、人の為にその商売をさせていただいているのだという自覚のもとに、だから自分を高め、商売の質を高めることにこそ競争すべきで、同業者を排除するのではなく、「共通の善」に向って同業者が互いに向上し、共にこの不況を生き抜くことが今一番大事なときではないでしょうか。日蓮聖人は四条金吾殿御返事に
「お宮仕えを法華経と思し召せ。『一切世間の治生、産業、皆実相と相違背せず』 と(法華経にあるの)はこれなり」と、信仰を身につけ、商人は良い商売をして世に立てとのお教えです。

(平成10年9月1日)

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