家族の役割1997年07月01日
7月1日は香港が中国に返還され、また欧州に於いては通貨統合の新しい発足が成されるという事ですが、そういう世界的な重要な動きを前にした昨日の新聞は、全紙第一面に神戸の淳君殺害容疑者の逮捕、自供の内容などを扱っていました。
中学3年生の犯行と聞いては何とも言い様のないやるせない気持ちですが、日本子どもを守る会名誉会長の太田東大名誉教授は、今の思春期の子どもたちが直面する問題に就いて
「本来、人間は密度の濃い協力関係の中で育つことが必要だが、現代の子供たちは隣近所と付き合いのない両親の中だけで育っており、人とのかかわり合いの知恵が発達していない。思春期には親から離れて自立をもとめられるが、その場は大人がつくった競争社会であるために子供たちは二重に不幸である。内面に悩みを抱え、独り立ちに悪戦苦闘する際の欲求不満が弱者に向けられたりする。事件は大人自身が生き方を問い直す機会だ」
とコメントしておりました。(長崎新聞)
人間とは人のあいだがらと書くように、人と人との係わり合いの中で磨かれて、人間的成長を遂げて行くものなのですが、せっかく親ばなれしても、両親との馴れ合いの社会しかしらない子どもたちを今の競争社会は構ってはくれません。心の自立が何も出来ていないままに社会に飛び出した子どもたちは、自分で立つことが出来なければ、曲がるよりほかはないでしょう。
しかし、家庭というのは子どもたちにとって最少ですが、最善の社会です。家族全体が仏の子として平等の自覚を持ち、お互いの本分を認め合い、互いに助け合って生きて行く家族への感謝を忘れず、いつも世のため人のための思いに満ちた家庭を、両親が中心になって心掛けて行けば、自然に美しい愛情にみちた、世のため人のため、自立心旺盛な人格がつくられてゆくのではないでしょうか。日蓮聖人曰く
心の師とはなるとも、心を師とすべからずと仏は記し給いしなり。