法雨抄

ルールを守れ1997年06月01日

仏教では人間の欲望を否定し、金もうけの経済活動をさげすむように思われていますが、たんなる禁欲主義をよしとするものではありません。
然し、だからと言って、人間の欲望のままに無条件な金儲け主義を容認するわけでもありません。
人間の欲望には限界がなく、「黄金の雨が降ろうとも、人間の心は満足することがない」と言われる実態があります。
だから、お釈迦様は「理法にかない」「非難を受けない行為」という事を強調されるのです。
誰からも後ろ指を指されることのないような行い、不正を抱かずルールを守り、その上で経済活動に精励することが必要で、そうすれば幸福が約束されると教えているのです。
つまり、勤勉と節欲、そして社会ルールの厳守を前提とした上で、財の運用という正しい経済活動がなされるならば、仏教でもそれを奨励しているというのです。
そして、仏教が目指すところは、もうけたならば、そのもうけを自分を含めたすべての人に役立て、社会にそのもうけを還元できる人をつくることなのです。(プレジデント6月号中村元先生論文より)
人間誰でも金儲けに浮き身をやつしておりますが、それにはやって良いことと悪いこととがあり、社会的責任を免れるものではありません。仏教はつとにその職業倫理を説いて、日常経済生活の中に、仏教の修行も在ると説いていたのです。
端的に言えば、日常生活に於いて職業倫理を実践すれば、それがそのまま仏教修行に繋がるというのです。
日蓮聖人は四条金吾殿御返事に
「お宮奉仕えを法華経とおぼしめせ。一切世間の治生、産業、皆実相と相違背せずとはこれなり」
仕事の合間々々に思い出してする信仰ではなく、信仰の中に日常生活を置くならば道を踏み外す事もなく、どんな職業でも仏道修行に繋がるのです。

(平成9年6月1日)

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