法雨抄

自分を大切に1999年04月01日

今話題の乙武洋匡君の「五体不満足」は一気に呵成に読まされました。その前向きな、明るい生き方がぐんぐん魅了していくのです。その中で彼はこう言っています。
『今、中学校を中心として起こっている「いじめ」の問題。そのほとんどが「アイツは、オレたちとここが違うから」と言ったことが原因であると言われている。もし、子ども他人を認めることの出来る心を持ってくれれば、こうしたいじめの大半が解決するだろう。「みんなが違う」のはあたりまえなのだ。
そして、他人を認める心の原点は、自分を大切にすることだ。ボクが、バリアフリーを目指す活動を始めるようになったのは「ボクには、ボクにしかできないことがある」という想いからだった。しかし、それはボクだけに課せられたものではない。誰にも、「その人にしかできないこと」があるはずなのだ。・・・
日本中、いや、世界中を見渡したところで、自分と全く同じ人間などいるわけがない。たった一人しかいない人間であれば、その人にしかできないことがあって当然なのだ。そうであるなら、ボクらは、もっと自分自身を大切にしなければならない。誇りを持たなければならない、』と。
今の時代は 皆が自信をなくし、自分を粗末にし過ぎているのではないでしょうか。然し、その自分は天地宇宙の中で唯一絶対の存在なのです。それならば、皆が夫々の立場において、自分にしか出来ないことをじっくり取り組んで、小さくても良い、おそくても良い、自分の足元から少しずつでも明るくしてゆくならば、世の中は随分と明るくなって行くのではないでしょうか。
今は一人一人がその立場で、或いはその仕事を通して、自分に責任を持って立ち上がらなければならない時代ではないかと思うのです。

日蓮上人はご自分の責任目標を四条金吾殿御返事にこうおっしゃっています。
「日蓮はわかきより今生の祈りなし、ただ仏にならんと思うばかりなり」

(平成11年4月1日)

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