姿勢を正そう2000年05月01日
小笠原流礼法では、人間の自然の動きにもとづいた、なめらかで無駄のない動作を基本とします。それに欠かせないのが正しい姿勢です。姿勢を正すというと、背筋を伸ばすことを連想しがちですが、実はポイントは「腰」にあります。小笠原流では「胴づくり」といって、あらゆる動作の基本と位置づけています。これは弓馬から起こったもので、弓を引くなど上体や腕に多大な力を要するときには、とくに腰を安定させ、体勢をつくることが大事なのです。また、心を整え、集中力を高める姿勢でもあり、ここぞというときに内に秘めた力が発揮できる姿勢といえるでしょう。
まず、背骨が腰に突き刺さる感じで、上体を上に伸ばします。これでぐんとよい姿勢になります。そして下腹部に少し力を入れ、肩や背中から余分な力を抜きます。顎を自然に引き、手を膨らみをもたせて、指をそろえましょう。(MOKU 4月号「心をかたちに」より)
「正しい姿勢は一生の財産」とも言っておりますが、小笠原流では正しい姿勢を「生気体」といい、背中を丸め、顎を突き出したような姿勢を「死気体」といっているそうです。
この頃は「姿勢を正せ」という言葉が余りにも多く聞かれるようになりましたが、普通では考えられないような、いや、決してあってはならないような不祥事が続発しているのは、正しく世の中が「死気体」になってしまって、心がまがり、発想といったら短絡的なマイナスの発想ばかりになってしまっているからではないでしょうか。
今は誰かが何とかしてくれるだろうではなく、私たち一人ひとりが自らの姿勢を正し、内に秘めたそのエネルギーを以って周囲を潤して行くことが求められているのではないでしょうか。そして皆で手を取り合って住みよい世の中にして行こうと努力する所に、私たちの頂く法華経の目指す世界もまたあるのです。
日蓮上人 富木書に曰く
「体曲がれば影斜めなり」
平成12年5月1日 「姿勢を正そう」