法雨抄

欲望の奴隷になるな1999年12月01日

 もう出た一月号のプレジデントは、ビジネスマンのための般若心経と言う特集をくんでいます。
 激流の中に身を置くビジネスマンたちにとって般若心経ほど心の拠り所となるものはない、というのです。
 仏教では「欲を少なくせよ」と教えていますが、欲が有るからこそ社会は進歩発展するのではないでしょうか。
 ひろさちや氏は、「般若心経」は「空」を教えています。「空」というのは、ものに物差しがつていない---ということです。だとすれば、「欲を少なくする」というのは物差しにもとづいた表現だから、「空」という言葉にそぐわないはずです。
 「般若心経」が言っているのは、欲を少なくせよ、というより、
 欲望の奴隷になるな!
 あなたは、欲望を自由自在にコントロールできるようになりなさい!
 と言うことだと思います。現代的な言葉で言えば、
 もっと主体性を確立せよ!
 ということでしょう。欲望の奴隷では無しに、欲望の主人になればいいのです。と述べています。
 空の思想は仏教の中心思想をなすものであります。然し、空と言うと何もかもがむなしく、つかみどころがない様に思われがちですが、私たちの心に就いて考える時、欲にしばられるな、欲をコントロールして、目先の事にとらわれないで、自主的に物事を判断しうる人間になれと言う事ではないでしょうか。

  日蓮上人は四条金吾殿御返事に
 欲をも離れずして、仏になり候いける道の候いけるぞ

と、欲望のコントロールが仏になりうるか、否かの別れ道だとおっしゃっています。
 人間を生かす為の生命力としての欲まで殺しては元も子もありません。これを如何にプラスの要因として生かして行くかが大事なのです。その様に全てを生かす秘術が諸法実相を説く法華経の心です。


(平成11年12月1日) 欲望の奴隷になるな

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