法雨抄

慎重に事を2014年05月01日

 徳川家綱の若い頃、座敷で能の催しがあったとき、将軍は
 「夜の見物だから、周りを明るくしたほうがよい。日暮れまでに座敷を白壁にしておけ」
と命じた。松平伊豆守はすぐさま四方に奉書紙を貼り巡らせて即席の白壁を完成させた。一同は大変感激して大老酒井忠勝に報告したところ、
 「いくら簡単に出来ても、命令すれば何でも出来ると思われたらよくない、出来なかったらどうするんだ」と忠勝は感心しなかったという。
(斉藤孝編集・森鴎外「智慧袋」より)
 何事も容易だからと軽率にすべきではない。慎重にことを進めて、誰にでも納得のいく結果を期すべきことを教えたのではないでしょうか。
日蓮大聖人報恩抄に曰く
 光宅(こうたく)が忽ちに雨を降らし、しゅゆに花を感ぜしも、妙楽(みょうらく)は感応此(かんのうかく)の如くなれどもなお理にかなわず、と


平成26年5月1日 慎重に事を

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