法雨抄

名こそ 惜しけれ2006年12月01日

 先月中旬に名古屋で開かれた愛知県地区のロータリークラブの年次大会に参加、研修の一部を負担させていただきましたが、大変な盛況でした。
 名古屋と言えば私には先ず中村区が加藤清正公の生誕地であると言うこともあり、会場がまた名古屋城の真西にあって、加藤清正公がその築城にたずさわったといわれる名古屋城を窓越しにみられ、規模は違いますが本経寺の創立と思い合わせて感無量なものがありました。
 名古屋は愛知万博の成功に気を良くしており、売り上げ好調のトヨタ自動車があり、なかなかの活気に満ちた大都会だと思いました。
 そして大会二日目のメインは日本経団連の名誉会長で、トヨタ自動車の取締役相談役の奥田 碩(ひろし)さんの「世界の現状と日本の針路」と言う講演でした。
 奥田さんは、グローバル化、人口減少、地域格差、資源と環境などの問題について説き進んで、最後心の豊かさと言う事に言及され、何よりも世界から尊敬される日本を目指さなければならないと強調された。
 然るに今の日本は物質文明の進歩で、豊かさとは物であると錯覚して、心を荒廃させ、進歩のために必要な科学的思考は大事な事であるが、その科学的思考によって日本は駄目になった。今新興国では教育水準の向上を目指して懸命に努力しているのに、わが国の現状はどうであろうか。今大事な事は武士道的な精神教育であろう。義を重んじ、忍んでたえ、惻隠の情を持って周囲と和していくことが大事であり、そして名こそ惜しけれ、と言う自尊心を培うことであろう。その自尊心の欠如がいじめを生み、企業の不正を生んでいるのではなかろうか、と。日蓮聖人「崇峻天皇御書」に曰く
 百二十まで持ちて名をくたして死せんよりは、生きて一日なりとも名をあげん事こそ大切なれ。......蔵の財(タカラ)より身の財すぐれたり、身の財より心の財第一なり。

平成18年12月1日 「名こそ 惜しけれ」

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