法雨抄

美しい日本2006年10月01日

 安倍新首相は其の施政方針演説で冒頭
 額に汗して勤勉に働き、家族を愛し、自分の暮らす地域や故郷を良くしたいと願っている人々、そしてすべての国民の期待にこたえる政治を行ってまいります。
と述べ
 かつて、アインシュタインは、訪日した際、「日本人が本来もっていた、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを純粋に保って、忘れずにいてほしい」と述べています。21世紀の日本を、アインシュタインが賞賛した日本人の美徳を保ちながら、魅力あふれる、活力に満ちた国にすることは十分に可能である。日本人には、その力がある、私はそう信じています。
と、結びにもって行っています。
 残念ながら、首相が描く「美しい日本」のイメージは、今の日本にはないとは言わないまでも、とぼしくなったものばかりのような気がします。
 そしていたずらに理想郷を他に求めたり、自分の願いがかなわないと国のせいにし、政治のせいにし、はては意にさからうものがあればこれを殺傷して恐れず。罪の意識もない。そういった事件が毎日のように報道されて悲しい思いがします。
 然し、今ならまだ取り返しがつくのではないでしょうか。「美しい日本」は誰でもが願っている夢だからです。
 然し、そうした夢は誰かが与えてくれるものでもありません。安倍さんが与えてくれるものでもありません。だからと言ってどこか遠くにあるものでもありません。私たち一人ひとりがその気になって努力すれば今ここに実現される世界ではないでしょうか。それは私たち一人ひとりの心の中にある世界ではないでしょうか。
 日蓮上人一生成仏抄に曰く
 浄土と言い、穢土と言うも土に二つのへだてなし。只我等が心の善悪によるとみえたり。

平成18年10月1日 「美しい日本」

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