法雨抄

仕事を好きになれ2006年09月01日

 愛知県三河地区の岡崎から豊田市足助(あすけ)を経て、長野県に通じる伊那街道は江戸初期ごろには馬で運ぶ塩の道であった。其の街道を進んで近づくと、小説「夜明け前」の世界であり、街道は山に包まれている。そして道沿いの神社には必ず馬の像が飾られている。馬には神が宿っていると信じられているからで、祈りの道でもある。
 そんな街道筋の足助に、江戸初期の思想家、禅僧鈴木正三(すずきしょうさん)が誕生している。(朝日新聞「経済気象台」)
 正三は初め徳川家に仕え、関が原や大阪の陣にも出陣した事があるといいます。
 そして出家した彼は職業生活に即した仏法を説いたということで知られていますが
 「士農工商、いずれの身分においても、それぞれの職業分野で懸命に働く事が佛行に通じ、いい社会が出来る」
と説きました。「経済気象台」は
 「江戸初期、商人軽視の風潮の中で、流通の重要性を的確に認識していたのは驚きである」
と賞しています。
 身分制度の時代において、一応身分社会を認めざるを得なかった事は別として、それぞれの職業において其の分を尽くせということを教えたもので、其の心は現代にも通じるのではないでしょうか。
 京セラの稲盛会長がテレビの対談で、
 「自分の好きな仕事などそんなにあるものではない。自分が其の仕事を好きになることが大事だ」
といっておられましたが、好きになれば、仕事が面白くなる。面白くなれば業績も上がってくる。業績が上がれば売り上げものび、自然と周囲も潤ってくる。こうしてそれぞれの仕事を通じて、世の為人の為に益する事が仏の思し召しでもあるというのが正三の心でもありましょう。
 日蓮聖人は四条金吾殿御返事に
 お宮仕えを法華経とおぼしめせ、と。

平成18年9月1日 「仕事を好きになれ」

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