法雨抄

体積か重さか2004年05月01日

 小学校3年生の女の子の質問。
「台所にある醤油、ジュース、酒などの容器には、ミリリットル単位で書いてあるのに、食用油だけグラム単位なのは、なぜですか」
 考えても見なかった質問に、びっくりした先生は母校の大学の先生に尋ねました。
 そして分かったのは、油は水より温度による体積の変化が大きいからだ、と言うことでした。
「例えば油の容器に、内容量500ミリリットル、と書いてあっても、買って帰って涼しい台所に置くと、それより減ってしまうことがあるのです。」
 そこで油は、体積でなく、重さで表示することになった。温度で体積が増減しても、重さは変わらないからです。
 面白い昔話があります。
 江戸時代のこと、ずる賢い油商人がいて、油を入れた大瓶を日当たりのいい場所に置いておいた。油は温められて、どんどん体積が増える。それをマスではかって売り、大儲けした。
「すなわち重さではなく、体積で売って、あくどく稼いだわけです」
(上前淳一郎氏の「読むクスリ31」より)
 体積と重さの違う油のようなものにかんしては見せ掛けの量で行くか、実質の重さでゆくかということでしょうが、考えてみると私たちの人生もまた油のようなものではないでしょうか。
 世の中には見せかけの立派さで、堂々?と世を渡る人もありますが、やがては馬脚をあらわすことになるのが落ちのようです。
 それに比べると実質の重さ、心の重さで着実に生きる人は、日向の油、日陰の油と、世間的な浮き沈みはあっても、世間の評価は変わりなく、最後には勝ちを占めることになるのではないでしょうか。
 日蓮上人は崇峻天皇御書に曰く
 蔵の財(タカラ)より身の宝勝(スグ)れたり、身の宝より心の宝第一なり。


平成16年5月1日 「体積か重さか」

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