法雨抄

正しい道理2000年04月01日

 「情けは人のためならず」
 と言うことわざがありますが、ある大手出版社から刊行された「ことわざ辞典」には、このことわざに対して
「他人に同情の手を差しのべるのは必ずしもいいことではない。助けられた人が其れに甘んじて、自立心を失い、他人の助けをアテにする駄目な人間になってしまうから」
と、間違った解釈を堂々と載せているそうです。(シグネチャー2月号塩田丸男氏随想より)
 因みに、大辞典でこのことわざを引いてみますと、
「情けを人にかけるはその人の為のみならず、善報ありて必ず我が身の為ともなる」
 とありました。
 これは、人に情けを掛ける事は、他人を良くするだけで、自分は損をするようにも思えるが、然し、其れによって世間から尊敬を受け、信用を得て、損得には変えられない大きな功徳を得ることになり、自分の事業の繁栄にもつながってゆくものだ、と他人への温情を勧めることわざなのです。
 時代が変わるとこんなにも変わってゆくものでしょうか。
 時代が変わればものの考え方も変わらなければならないと言う主張も分かります。 しかし、時代がどうであろうと、変わっていい事と変わってはならない事とがあります。変化に係わりなく忘れてはならない事は「正しい道理」と言うことではないでしょうか。
 事業をやるにしても、儲けの為には情け容赦もなく、道理をふみはずした事業はやがて社会からも見捨てられてしまいましょう。自分の事業も儲かり、社会にもその功徳を及ぼして行くような温情の経営こそが繁栄の本ではないでしょうか。

 日蓮上人 蒙古使御書に曰く
 「時に当たりて、我がため、国のため、
大事を少しも考え違わざるが智者にては候なり」


平成12年4月1日 「正しい道理」

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