法雨抄

ツキということ1999年11月01日

 今年の日本シリーズは中日有利という大方の予想を裏切り、四勝一敗でダイエイホークスが勝って日本一に輝きました。九州の我々からすると誠におめでたいことで嬉しいことでした。誰もがこんなにすんなりとダイエイが優勝するとは想像もしなかったところで、少しできすぎではないか、ダイエイは大分ついていたなという印象はいなめません。
 然し、王監督も「やはりツキというものを考えざるを得ない。其れを生かしていくのも、僕らの仕事なんだ、とあらためておもったね」とツキをみとめながら、こんなことを言っていました。
 「ツキといったって、技術の裏づけがないところに突然降ってくるわけがない。それに長いシーズンには、どのチームも必ずよい流れが来ることがあるし、ツキを持った選手だってあらわれる。要は、そうした流れ、ツキを意識して生かしていけるかどうかなんだ。幸い、今年のうちの場合は、ほとんど首位で過ごせたので、いい流れが来ているとか、あいつにはツキがあるとか、余裕を持って見極めることができた」(プレジデント十二月号阿部珠樹・・王 貞治)
 ツキとか運というのも実力の内という事を言いますが、其のツキを呼び込むのは其の人の努力であり、研鑽によるものでありましょう。
 私たちは努力もせず、ただ拱手して俺には運がない、ツキがないとこぼしてばかりいることがないでしょうか。
 私たちはめいめいの職業において夫々自己研鑽の努力を積み、実力を涵養してこそ、人々の尊敬と信頼をえて、自らも栄え、其の余香は周りを潤して行く事にもなるのではないでしょうか。そうした時、そこにいい流れが生まれ、ツキが呼び込まれることになるのだと思います。極楽浄土とはそういう心がけの人たちの世界だと思うのです

 日蓮上人は一生成仏抄に曰く
 「浄土といい穢土というも土に二つの隔てなし。ただ我らが心の善悪によるとみえたり」

(平成11年11月1日) ツキということ

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